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舞台『ジョーカー・ゲーム』感想というていで綴る愛の叫び【中編】

舞台『ジョーカー・ゲーム』の、運営から感じる並々ならぬスパイエンタテインメント性とキャスト紹介は、前回こちらの記事で書かせて頂きました。

舞台『ジョーカー・ゲーム』という極上のスパイエンタテインメント【前編】 - 世界は推しでできている

 

今回はネタバレも含みつつの本編の紹介をしていこうと思います。ただ、ネタバレといっても大枠のあらすじに留めるつもりです。というか、留めざるを得ない。
なぜなら、
・スパイが観客をも騙してくる
・考察が続々とあげられるようなギミックが多い舞台内容だった
・私は特別時代背景について詳しくない
こんな感じなので、もう読み応えのあるレポは諦めて(どなたか宜しくお願い致します)、私はただただ知能指数低い感想文をしたためます。お暇でしたら寄っていってください。
※書いたらまた長くなったので、後編ではなく中編にしました!!!1幕だけの内容です!!!

 

1幕


あらすじ

アニメ1&2話「ジョーカー・ゲーム」に、「XX」「棺」のエピソードを織り交ぜた構成。

 

冒頭

ドイツ語で紡がれる冒頭、結城中佐の拷問回想シーンから始まります。若結城役している谷口さんのかっこよさ…。
ここのシーンが2幕の結城とヴォルフ大佐の因縁につながります。

 

そして登場する軍服の佐久間中尉と武藤大佐。佐久間さんがD機関へ連絡要員として出向くことを命じられます。もうさ、姿勢、発声が軍人で、たいそうつらい。つらい。


嫌々着た背広姿でD機関に出向き、結城中佐に挨拶をするのですが、早々に怒られる。
「馬鹿か貴様、背広姿で敬礼する奴があるか」と。このセリフの使い方と使いどころがとても憎いので、どうか記憶に留めておいてください!!!できれば2幕の記事まで!!!

 

OP

OPが最高にかっこいい。のちにこれぞ西田舞台だと知ったのですが、とにかくエモくかっこいい。
上記の「馬鹿か貴様〜」のセリフ終わりと同時に、アニメEDのイントロが入ってくるの。円盤でもかっこよすぎて地団駄ダンダンしてしまう。そもそもアニメの時点でOPもかっこいいし、楽曲もかっこいいし、私に刺さっていたので、舞台が刺さらないわけがないのですが。

 

各キャラのキーとなる要素をさらりと詰め込んだOPでした。初見では気づかないのですが、このOP内で、すでに2幕での工作活動の伏線や、2幕の展開を暗喩する演出が組み込まれています。気付いた時かっこよくて死ぬかと思いました。*1

 

各キャラは本当に数秒ずつで入れ替わるのですが、その数秒にアニメ観てると「あ~~~~~それ~~~~」ってなるのが詰め込まれているのがすごい。
実井:人当たりのいい笑顔からのガンアクションに漂う底知れぬ腹黒感
波多野:新聞読みながらのアクションで最後に壁にもたれるという小生意気さ
甘利:エアーエマちゃんとエアーフラテ
田切:百合子の写真を眺めて思いを馳せる憂い顔に溢れる人間味
神永:超人アクロバティックウォーク
田崎&福本:ふくせん!!!
三好:三好はもう立っているだけで三好だし、2幕の思わせる襟を握る瞬間はずるい
翻弄される佐久間さんと、余裕綽々の機関員たち、という構図が曲に乗せて表現されていて、機関員たちがトランプ投げ一瞬ではけるところなんかは、ビジュアルが強くてずるい。

 

そしてなんといっても、D機関のなかに一人放り込まれる佐久間中尉の軍人としての在り方の表現の仕方に鳥肌たちました。
OPの終盤、サビにのせて流れる戦闘機の映像とエンジン音。それを眺め、全力で万歳三唱する軍人・佐久間中尉の後ろ姿。
いつかの戦争映画でみたことあるやつです。生身の人間が目の前でそれを魂込めてやっているのを観て、なんだか、ああそういう時代があったことはフィクションではなかったのだな…と身をもって感じました。初日に鳥肌が立ったのを覚えています。

 

D機関とプンスコ佐久間さん

1幕は主に「ジョーカー・ゲーム」のエピソードです。D機関への出向を命じられた佐久間さんが、これまでなんの疑問も持たず信じていた忠誠、信義をD機関のなかで否定され続けます。否定というか、散々小馬鹿にされカモられ、嘲笑されます。佐久間さんはプンスコプンスコしています。かわいいか。

 

あらびとがみの正当性の議論の最中、神聖だと信じて疑わないものを愚弄され、佐久間中尉は刀を抜こうとします(シルエットで刀を抜く軍人が佐久間さんの影として映し出されてかっこいい。某テニスのサムライのよう)が、背広なので帯刀していません。帯刀していれば切っていた。そんな大罪に当たる話を延々としているD機関を、ゴミを見るような目で睨む佐久間さんと、そういう思想が植えつけられてしまっている佐久間さんをいっそ憐れみの眼差しで眺める甘利の表情の対比がすきです。

 

リズミカルポーカー

ポーカーはこのエピソードの肝となる部分です。アニメでは多角的に視点を切り替えることで、そこでの駆け引きを映像にしていましたが、舞台でのポーカーはとっってもスタイリッシュでリズミカルで、アニメよりもさらに佐久間さんを小馬鹿にした展開です。

 

バクステで、このシーンの勝負の流れやリズムをキャストたち自身で考えだしたことを知り大変興奮しました。ここ大好きなんです。人はこんなにもスタイリッシュにポーカーができるのですね。

 

D機関員たち*2はポーカーをしているようで、実際は高度な情報戦を繰り広げるという、頭脳的な遊びをしています。それを彼らは「ジョーカー・ゲーム」と呼んでいます。タイトルきたこれ。

ポーカーをしているように見せかけて、ゲームに参加していないメンツもあらゆるサインを出して情報のやり取りをしているんです。円盤で観ても目が足りないし、なぜポーカー全景映像が特典に入っていないのか!解せぬ!細かく目配せしたり、ちょっとした手の動きがサインになっていたりで、ステージ上全方位で駆け引きがおこなわれているんです。
そんな真相に気づく術もなく、ポーカーで大敗したと思っている佐久間さんの去り際に、思わず「ジョーカー・ゲーム」の種明かしをする小田切。きれいなおめめの小田切は、軍人でも化け物でもなく、このなかで一番人間なんだと思っています。誰よりも愛が深い慈しみの人。キャスティングのひと、天才かな???瞳からピュアな愛が溢れているもの。 

 

この後、イカサマしてたのか!とプンスコな佐久間さんに対して、結城中佐がD機関のスパイのあり方について語ります。その際のD機関たちのライターを使った火の演出と、タバコすぱすぱ(電子タバコまじリアルな)しながらポーカー台片付けるのがカッコいい。


でもそのあとまたみんなで佐久間さんdisるんですよね。散々ポーカーでカモったのに!!!トートロジーだの鰯の頭だの、さすがにかわいそう。佐久間さん怒りでぷるぷるだぞ。
アニメより感情的に佐久間さんが突っかかっていくから、余計いじめられっ子みたいになるのが、かわいいですね。ぷるぷるかわいい。

 

スパイと人間の狭間、小田切

騙されてプンスコしながら、スパイという存在を批判する佐久間さん。「一生誰も愛さずに生きていくことなどできるわけがない、そんなことが出来るのは人でなしだけだ」と。そして、この言葉に己の信念を揺り動かされる小田切

舞台オリジナルのくだりですが、このやりとりはとても好きです。スパイの中に紛れてしまった、スパイになりきれなかった人間小田切の切ない表情だこと…。(おめめがきれいなのはしつこいからもう言わないぞ!おめめきれい!)

 

ここに、平行して「XX」のエピソードを軽く走らせます。小田切が、シュナイダー事件の任務に当たるわけですが、元軍人である小田切は佐久間の言葉が胸に突っかかってしまう。それがのちに、とある決断につながります。
この決断自体は原作通りなのですが、そこへ至るきっかけに、D機関員ではない佐久間の言葉を持ってくるのは本当にうまいな〜そうきたか〜と、一本取られた気分でした。

 

ゴードン邸捜索

そして、ゴードン邸捜索です。憲兵隊として踏み込むことになったD機関の面々。隊長役をしろと言われた佐久間さんが、「踏み込んで証拠がなかったらどうするんだ?」と問うた際に「だってあるんでしょ?証拠」と不敵に笑む三好ずるい、かっこいい。ここの言い方日替わりだったの~~~。もう全部収録されてなくて悲しい。
三好の視線のちょっとした演技が本当に緻密に計算されている感じですごいのです。上手い人(けっして評論家気取りでなく、純粋にうまさに圧倒される)ってこういうお方のことだよな〜〜と、どのシーン見ても思ってしまう。

 

オラキオさん演じるゴードンは緩急の緩担当です。シリアスなシーンではありますが、肩の力を抜くシーンとしてゴードン笑タイムがあります。
特典に日替わり全部入っていましたが、全部ウジ虫見るような目で見つめているし顔の筋肉まったく動かなさい佐久間さんは、本当に軍人なんですね。一方、笑いに弱い神永と波多野よ…とくに神永たいてい憲兵帽の下で口元にやにやしてましたからね!カメラに映ってなくても私知ってる!いつもにやにやしちゃうのかわいくて観てたから!

 

ギャグもありつつ、捜索をするわけですが、ゴードンがスパイである証拠が見つからない!困った!なぜだ!事前に内偵済みで証拠があるって聞いていたのに!佐久間さん大ピンチ!
ここで、聡明な佐久間さんは気づいてしまう。武藤大佐が自分のミスを帳消しにして且つD機関を潰すために、自分を捨て駒に使おうとしたことに。そのためだけに、D機関の連絡要員に任命されたことに。貫いた忠義も、信じた国家も、容易く崩れていく。

それでも軍人である佐久間さんはどこまでも軍人で、約束した以上(三好が勝手に面白半分で宣言しただけだけど)、武士に二言はないとハラキリしようとするのですが、このシーンについてはちょっとやそっとのアドレナリンではないのでもううまく書けません。肩甲骨、背筋、くびれ、血管、ハンコ注射…だ、だめだ、脳が働かない…もう円盤買って観てください(丸投げ)

 

いざ…!というタイミングで、小田切によるハラキリキャンセル*3を受けて、佐久間さんは考えます。これまで妄信的に信じてきたものを、すべて自分の頭で考え直します。
このとき、顔の見えない憲兵役をしていたD機関員たちが、入れ替わり立ち替わり、軍帽をちらりと脱いで佐久間さんとの過去の会話の回想を入れてくるのが、かっこいい。さっとまた軍帽をかぶって闇に紛れていく姿が、こ、これが…D機関のス、スパイ…感すごい。


頭のいい佐久間さんは、真相にたどり着きます。円盤お持ちの方は、何卒「Back of the Imperial portrait!!!」と叫ぶ佐久間さんの英語の発音*4をお聞きください、最高だ。

 

新生佐久間中尉

鰯の頭だった佐久間さんが、ゴードン邸の件を経て、信じるべきものを自分の頭で考える軍人に変わります。一件後の佐久間さんのどこか晴れやかな表情は、下劣な存在と思っていたスパイたちを新たな視点で見つめ直した結果なんだと思います。
言ってしまえば、これまでの佐久間さんは、上官が「スパイは下劣な行為」と言っていたからそう信じていたし、疑いもしなかったわけです。でも実際に、佐久間を陥れようとしたのは上官だったし、スパイたちの言葉をヒントに任務を成功させることができた。

そんな風に考えるようになった佐久間さんだからこそ、報告の際に、武藤大佐に対して序列をわきまえながらも物申すことができたんですよね、きっと。(個人の感想です)

 

三好へかける声からも攻撃性が消え、なんなら薄い笑みまで見せてしまいます。素直か!素直がすぎるぞ!!!またポーカーでカモられちゃうぞ!!!
でも三好もみんなも一目置くような顔をしていたから、今度はきっとポーカーに見せかけたジョーカー・ゲームをみんなで楽しむんでしょう。

 

と、思いきや。武藤大佐の思惑通り動かず、むしろD機関に手柄を渡してしまった佐久間さんは、当然ながら大佐の怒りをかいます。そして戦地行きを命じられます。名誉の戦死を遂げて来い、と。
最後の敬礼が、心を抉ります。軍人として散る覚悟、そこに垣間見える、"駒"ではなく"自ら思考する者"となった故の葛藤と悔しさを浮かべた表情。軍人としては本望であっても、思考する佐久間さんにはどこか納得しきれない。ああつらい、やばい、つらい(思考をやめて言葉を捨てたくまとぱんだ)

 

田切は偽名を捨てる

一方で、佐久間さんに心を動かされた小田切もシュナイダー事件の任務を終えるとD機関を去る決意をします。
結城中佐から偽名ではなく本名を呼ばれると、きれいな瞳(また言っている)に涙を浮かべて敬礼をします。
結城中佐がかける「馬鹿か貴様。背広姿で敬礼する奴があるか」という言葉。もう愛情しかこもっていない。


小説よりもアニメよりも、魔王と称される結城中佐は体温のある人間でした。これはきっと舞台だからこそ。そこにある体温が、けっして結城中佐も機械なんかではなく血の通った人間であると、熱量となってステージ上から語りかけてきました。

 

桜散る道

1幕ラスト、結城中佐と佐久間さんの会話のシーンは、アニメ同様桜吹雪が散っています。
戦地行きの辞令を受けた後の佐久間さんは、さらに憑き物がおちたような顔をしています。そして、結城中佐は佐久間さんをD機関に誘います。
佐久間さんはそれを断り、自分の意志で最後まで軍人であることを選びます。

 

「これより戦地に赴きます」と歩き出す佐久間さんを呼び止め、「武運を祈る」と声をかける結城中佐の慈愛に満ちた表情が、もう。やはり舞台の結城中佐は、とんでもなく愛に満ちた人なんだと思う…。

 

結城中佐のそのセリフとともに入るアニメOPのエモいメロディライン。死んでしまう。桜とともに私も散った。散ったついでにもういっそ踏みつけてくれ。たのむ。息ができない。
初日から楽まで、腰が抜けるほどおもしろく切なく満足度が高くて、毎度、座席で抜け殻が錬成されていました。

 


雑記

1幕はこれにておしまい!原作知らなくてもなんとなく雰囲気と私のテンションだけでも伝わってくれていたらうれしい!いや、できれば円盤買って観てほしいですけども!


アニメのサントラがあの川井憲次氏なんです。アニメサントラだけでもとにかくかっこいいのですが、それを見事に舞台で活用していて!!!こういうところも、アニメ観てからだとより高まるのでやはりアニメもおすすめです。
舞台の後にジョカステロスのハートを抱えたまま、アニメサントラ買い揃えました。そうしたらメインの楽曲ほぼほぼ舞台で使っているから、余計にロスが悪化したことを記しておきます。
ロスはそっとしておくべきでした。傷を抉ってはならない。


文章にはできない衣装、照明、音響、その他すべてが本当に最高でした。とくに照明。照明ひとつ、役者が振り返るだけで、場所と時間を切り替える手法がすごく分かりやすい。たまに(は???これなに???どこでしゃべってんの?)となる舞台にであってイライラするけど、そんな短気にも優しい、伝えたいであろうことを素直に受け取れる作品でした。

 

1幕は出番が偏っていたのですが、2幕はD機関員たちが大活躍するザ!スパイ!アクション!イエイ!なストーリーなので、1幕とはまた全然違った楽しみがあるんです!

ではまた2幕でお会いしましょう…!!!

*1:具体的には2幕の感想記事のほうで触れたいと思います。覚えていられたら

*2:化け物のようなIQを持っている

*3:刀が蹴り飛ばされるのですが、毎回見事な弧を描きすぎてません?

*4:あとポーカーシーンのBet! Call! Raise! も。英会話スキルけっこう高いとかなんとか